ラグビー観戦が脱炭素に貢献:浦安D-RocksとNTTドコモビジネスが描く「カーボンオフセット試合」の全貌

<![CDATA[

現代社会において、企業活動における環境負荷低減は喫緊の課題であり、スポーツイベントも例外ではありません。JAPAN RUGBY LEAGUE ONEに所属するラグビーチーム「浦安D-Rocks」は、NTTドコモビジネスとの協業により、2024-25シーズンのホストゲーム全9試合で「カーボンオフセット試合」を実施すると発表しました。これは、単なる環境保全に留まらず、ファンや地域社会を巻き込む先進的な取り組みとして注目されています。

スポーツイベントにおける脱炭素化の潮流

近年、企業にはESG(環境・社会・ガバナンス)への配慮が強く求められ、脱炭素社会の実現に向けた取り組みが加速しています。NTTグループも「2040年ネットゼロ達成」という壮大な目標を掲げており、その一環としてNTT Sports Xが運営する浦安D-Rocksのカーボンオフセット試合が位置づけられます。プロスポーツの試合は、会場の電力消費や観客の移動などにより、少なからずCO2を排出します。こうしたイベントが環境負荷を低減する挑戦は、スポーツビジネスにおける新たな潮流を形成し、持続可能な社会への貢献を示す重要なアクションと言えるでしょう。

NTTドコモビジネスが提供する「J-クレジット」の仕組み

浦安D-Rocksのカーボンオフセット試合は、NTTドコモビジネスが提供する「J-クレジット」を活用することで、試合開催に伴うCO2排出量を実質ゼロにするものです。カーボンオフセットとは、自身が排出したCO2を、別の場所でのCO2削減・吸収活動によって相殺する考え方を指します。本取り組みでは、特に日本の豊かな自然と農業に根ざした以下の2種類のクレジットが用いられています。

  1. Green Natural Credit(農業由来)
    NTTドコモビジネスが創出・販売する農業由来のJ-クレジットです。水稲栽培における「中干し期間の延長」といった工夫により、メタンガス発生を抑制するユニークな取り組みから生まれています。日常の食卓に並ぶお米が環境貢献に繋がる点は、非常に興味深い視点を提供します。

  2. 森林価値創造プラットフォーム「森かち」(森林由来)
    住友林業とNTTドコモビジネスが提供するプラットフォームで取り扱われる森林由来のJ-クレジットです。間伐など適切な森林管理を通じて吸収されるCO2量が国に認証され、クレジットとして活用されます。国土の多くを森林が占める日本において、自然の力を借りた脱炭素化の有効な手段と言えます。

これらのクレジットを合計することで、会場での電力使用量や来場客の移動に伴うCO2排出量を含む、233t-CO2もの排出量をオフセットする見込みです(農業由来:117t-CO2、森林由来:116t-CO2)。

ファンと地域を巻き込む意識改革と導入メリット

このカーボンオフセット試合は、単にCO2を相殺するだけでなく、ファンや地域社会の環境意識向上を促す多角的なメリットを創出します。試合会場では、リアルタイムでのCO2排出量速報値の提示や、取り組みに関するアナウンス、ビジョン投影が行われ、来場客が環境問題への意識を「自分ごと」として捉えるきっかけを提供します。

試合会場でのビジョン投影の様子
▲試合会場でのビジョン投影の様子。D-Rocksの試合が、地球環境への意識を高める機会にもなる。

さらに、シーズンオフ期間にはプロ選手を起用したプロモーション連携が予定されています。ファン感謝祭でのPRブース出展やお米の配布は、ファンが農業由来のJ-クレジットに間接的に触れる機会となり、環境問題への関心を高める効果が期待されます。また、2025年9月には選手が米農家を訪問し、稲刈り体験などを通じて交流する企画も進行中です。選手自身が環境保全の現場に触れることで、そのメッセージに説得力が増し、地域社会との絆を深める「顔の見える」環境活動として機能するでしょう。

2025年6月1日に行われたファン感謝祭でのお米配布の様子
▲ファン感謝祭でのお米配布。選手から手渡されたお米は、環境への意識も運ぶ。

今後の展望と市場性:スポーツを通じた社会貢献モデル

浦安D-RocksとNTTドコモビジネスの取り組みは、スポーツイベントが単なるエンターテイメントに留まらず、社会課題解決のプラットフォームとなり得ることを示しています。観客は試合を楽しみながら、同時に地球の未来を考えるきっかけを得ることができ、これはスポーツファンにとって新たな価値提供と言えます。

両者は来シーズン以降もカーボンオフセット試合を継続し、さらに脱炭素社会実現に向けた新たな施策にも挑戦する方針です。この先進的な取り組みは、他のプロスポーツチームやイベント主催者にとっても、持続可能な運営モデルを構築する上での重要な導入事例となるでしょう。スポーツが持つ影響力を活用し、環境意識の向上と具体的な脱炭素行動を促進するこのモデルは、今後さらに市場性を高めていくと考えられます。

取り組みイメージ図
▲NTT Sports XとNTTドコモビジネスの役割分担と連携が視覚的に示されているイメージ図。

関連情報

]]>